ピアノ教本はどう進めるのが正解?
ピアノを習い始めると、多くの先生がまず取り入れるのが「教本」です。
ただし、最初は単調な練習の繰り返しに感じやすく、「つまらない」「曲だけ弾きたい」と思う方も少なくありません。
しかし、教本を避けてしまうと基礎が固まらず、後々難しい曲に挑戦したときに壁にぶつかってしまいます。
ピアノの教本は、順を追って積み重ねることで確実に演奏力を高めるために作られています。
今回は、教本の意味やメリット、そしてどのような順番で取り組むと効果的なのかを詳しく解説していきます。
ピアノ教本とは?基礎を固めるための必須アイテム
ピアノ教本とは、演奏に必要な技術を効率的に学ぶための教材です。
出版社やシリーズによって内容や構成はさまざまですが、大きく「入門」「初級」「中級」「上級」と段階に分かれています。
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入門書 … 鍵盤の位置や音符の読み方、簡単なリズムの理解などを学ぶ。
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初級者向け教本 … 両手を使った演奏、スムーズな指運びの練習が中心。
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中級者向け教本 … 音階やアルペジオ、強弱表現など、音楽性を深める内容が増える。
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上級者向け教本 … 高速のスケールや複雑な和音進行、難曲を弾きこなすための技巧訓練。
このように段階ごとに内容が整理されているため、適切な順序で取り組むことで自然とスキルアップできるようになっています。
ピアノ教本に取り組むメリット
「好きな曲だけを練習してもいいのでは?」と思う方もいるかもしれません。
しかし教本には、曲だけを練習するのとは違ったメリットがあります。
ここではその代表的な効果を紹介します。
初心者でも正しい弾き方が身につく
ピアノを始めたばかりの人は、つい自己流で鍵盤を押してしまいがちです。
入門用の教本には「指の番号」「手首の動かし方」「基本姿勢」などが丁寧に説明されているため、正しいフォームを自然に習得できます。
たとえば「バイエル」や「メトードローズ」などの定番教本は、初心者が無理なく演奏できるように構成されており、初めてでも安心して取り組めます。
曲だけでは学べない幅広い技術が身につく
好きな曲を練習するだけでは、その曲に必要なスキルしか習得できません。
一方、教本は段階的に幅広いテクニックを練習できるように作られており、偏りなくスキルを伸ばせます。
中級レベルの教本にはスケール(音階練習)、分散和音、リズムのバリエーションなどが含まれ、難曲に挑戦するときの「土台作り」に最適です。
上級者は速弾きや複雑な和音が得意になる
上級者向けの教本では、連続するオクターブや高速スケール、複雑な和音進行など、実際のコンサート曲でよく出てくる高度な技巧を集中的に練習できます。
もちろん難しい曲を繰り返し練習するだけでも上達しますが、教本の課題は技巧を効率的に強化できるよう設計されているため、より短期間で効果を得られます。
教本はどの順番で進めればいい?
実際にどんな流れで取り組むのがよいのか、代表的なステップを紹介します。
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入門書(ピアノを触り始めた人向け)
音符やリズムの基礎、片手から両手への移行を学ぶ。
例:「メトードローズ」「バイエル前半」など。 -
初級者向け教本
簡単な両手演奏、和音やアルペジオの基礎を習得。
例:「バイエル後半」「バーナムピアノテクニック」など。 -
中級者向け教本
表現力を高め、スケールや装飾音などを練習。
例:「ブルグミュラー25の練習曲」「ツェルニー100番」など。 -
上級者向け教本
コンサート曲に対応できる技巧を学ぶ。
例:「ツェルニー30番・40番」「ショパン エチュード」など。
この流れを意識することで、無理なくステップアップできます。
教本を続けるコツ
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毎日の練習に少しずつ組み込む … 曲練習と組み合わせると飽きにくい。
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目標を設定する … 「この曲が弾けるようになったら次の教本へ」と区切る。
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先生に相談する … 自分のレベルに合った教本を選んでもらうと効率的。
教本は「つまらない作業」ではなく「上達の近道」と考えることで、継続しやすくなります。
👉 ピアノ教本は、単なる練習課題集ではなく、演奏技術を段階的に伸ばすための「道しるべ」です。
順序を意識しながら取り組むことで、好きな曲をより美しく弾ける力が自然と身についていきます。
教本に取り組む順番
ピアノを練習するとき、「どんな教本を、どんな順番で進めるのがよいのか?」という疑問を持つ方は多いのではないでしょうか。
「早く難しい曲が弾きたいから、初心者だけど上級者用の教本に挑戦しよう!」
そう思う気持ちは理解できますが、基礎を飛ばすと結局つまずきが増えてしまい、スムーズに進めなくなってしまいます。
ピアノの教本は段階ごとに目的があり、順序立てて進めることで確実に力が身につくように設計されています。
ここでは、レベルごとにおすすめの取り組み順を解説していきます。
ピアノを触ったことがない「入門レベル」
まったくピアノに触れたことがない人は、まずは 鍵盤の位置や音符の読み方 を覚えるところからスタートしましょう。
入門用の教本は片手で弾けるやさしいフレーズや、白鍵を中心とした練習が多く、大人には少し物足りなく感じるかもしれません。
しかし、子どもにとっては音楽の世界に自然に入れるよう工夫されており、ピアノ学習の最初の一歩に最適です。
基礎的な内容なので早めに終わらせられることも多く、次のステップへ進むための準備として役立ちます。
両手で弾き始めた段階
片手で弾くことに慣れたら、いよいよ両手での演奏に挑戦です。
最初は両手で同じ音を押さえるなど、シンプルなものから始めるのがおすすめ。
慣れてきたら徐々に左右で異なる動きをする課題に取り組んでいきます。
この段階の教本は、まだ和音や複雑な伴奏は出てこないため、片手の練習から自然に両手演奏へ移行できるよう設計されています。
焦らずゆっくり、左右のバランスを意識しながら練習することが大切です。
簡単な楽譜を両手で弾けるようになったレベル
簡単な曲を両手でスムーズに弾けるようになったら、次は 和音(コード) を扱う教本に取り組みましょう。
和音はピアノ曲に必ず出てくる要素で、演奏の幅を広げるためには避けて通れません。
最初は単純な三和音から始め、少しずつ音を増やしていくことで自然に習得できます。
この段階で和音に慣れておくと、今後取り組むクラシック曲やポップスの伴奏にもスムーズに対応できるようになります。
両手でスラスラ弾けるようになったレベル
両手での演奏に余裕が出てきたら、次は 指の訓練を目的としたテクニック系の教本 に進みます。
「ハノン教本」に代表されるような教材では、スケール、アルペジオ、トリルなどの基礎テクニックを反復練習でき、指の独立性や持久力を高められます。
また、この段階では技術練習と並行して練習曲集(ブルグミュラーやツェルニーなど)を取り入れると、実際の曲に近い形で表現力も鍛えられるので効果的です。
ピアノ教本の選び方
進める順番がわかっても、いざ楽譜売り場へ行くと種類の多さに迷ってしまうものです。
ここでは、自分に合った教本を見つけるためのポイントを紹介します。
取り組みやすさ重視か、技術重視かを選ぶ
教本には、イラストや工夫で楽しく練習できるタイプと、必要な技術だけをシンプルに詰め込んだタイプがあります。
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子ども → 視覚的に楽しいイラスト入りがおすすめ
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大人 → 無駄のないシンプルな構成が学びやすい
自分やお子さんの性格に合ったものを選ぶと、挫折せずに続けやすくなります。
早い段階で両手を扱う教本を選ぶ
最近は入門レベルでも早い段階から両手を使わせる教本があります。
最初は「ドの音だけ」を両手で弾くなどシンプルですが、自然にト音記号とヘ音記号の両方に触れられるのが魅力です。
両手の動きを早めに経験することで、その後の練習もスムーズになります。
解説の有無をチェックする
教本の中には「ほぼ楽譜のみ」のものと、「詳しい解説付き」のものがあります。
初心者や独学で学ぶ人は、弾き方や指使いが解説されているものを選んだ方が理解しやすく安心です。
一方、すでに一定の演奏力がある人なら、解説が少ない教本でも問題ありません。
自分の理解度に応じて選ぶと効率よく学べます。
まとめ:教本は段階を追って進めよう
ピアノは好きな曲だけを練習してもある程度は弾けるようになります。
しかし、本当に上達したいなら、基礎を固めるための教本を順番にこなすことが大切です。
上級者ほど基礎練習を大切にしており、いきなり難しい教材に挑んでも結果的に遠回りになってしまいます。
自分のレベルに合った教本を選び、段階を経て積み重ねることで、確実に技術は向上していきます。
👉 教本は「つまらない課題」ではなく、「上達のための地図」。正しく取り組むことで、より楽しく、自信を持ってピアノを演奏できるようになります。